タンデムシート



「… 。なあ、今度一緒に……。」


・・・

「やったーー!とうとう1年経ったで!!!」

今日はバイクの大型免許を取ってからちょうど1年目。
法的にはやっと二人乗りが許されるわけで……。

「これで晴れてアイツをバイクに乗せられるようになってんけど……うーん、大丈夫やろか?」

アイツ、ちょっとぼんやりしてるとこあるからなー。
けど、あれでいて運動神経は結構ええほうみたいなんやけど……体育祭のパン食い競争でも1位とっとったようやし……。
ふむ、ちょい練習すれば案外楽勝かもしれんな……。

「明日は日曜やし……よっしゃ!今夜決行や!!待っとれよ! !!」


!」

校門に差し掛かったところで、ふいに声を掛けられ、思わず飛び上がりそうになってもうた。
振り返ると、 だった。

「…あ、あぁ自分か。ちょうど今自分のことを考えとってん…あ、いや、こっちのハナシ。」

頭の中は今夜の計画のことで一杯だったため、思わぬ不意打ちに、うっかり余計なことを口走りそうになってしまった。
アカン。めっちゃ格好悪いで、オレ…。

、これから帰り?」
「あぁ、自分も今帰りか?ほな、一緒に帰ろかv」
「うんv」

・・・

「なぁ、 。……その。今夜……。」
「え?」
「あ、いや……うーん。そや!今日土曜やろ?自分、今夜は夜遅うまで起きてたりすんの?」
「えーっと…うん、起きてるよ!毎週土曜日はTVの深夜番組観たり、ラジオの深夜放送をベッドの中でこっそり聴いてたりするから…。」
「そ、そうか?オレもやねん!海外のサッカーの試合とかやってたりするんでな。」

よっしゃあ!こいつはもしかしたらイケるで!

「…… ?」

ハッ!? が目を細めてオレのことじぃっと見とる!
オレの作った握り拳を見て不審に思ってんのとちゃうやろか…。

「あ?い、いや、なんでもあらへん。ハハハ…。」
「……へんな 。」

とにかく、今はまだナイショ…ナイショや……!

・・・


コツン……コツン……。

「?」

さっきから、窓ガラスに何かが当たっている音がする……。
あ、私、いつの間にか眠っちゃってたんだ。
アンティークのラジオからは懐かしいヒット曲が流れている……。

コツン……。

あ、この音だ!

「なんだろ?」


私の部屋は2階で、道路に面していて、何も窓ガラスに当たるモノはないはず……。
ラジオのスイッチを切り、ベッドから抜け出てそっとカーテンを開けてみた。
窓の外はまだ暗い……。

窓の下にはバイクにまたがった少年がいて、こちらに向かって手に持った何かを投げるポーズをしていた。
が、私に気が付くとその動作をやめ、かわりにニッコリと微笑んで手を振っている。

(えっ!? !?)

思わず大声を上げそうになるのをこらえ、そっと窓を開けてみる。
、どうしたの?こんな時間に!?」
「自分を迎えに来たんや。なあ、これから海見に行こうやv」
「えっ!?これから!?」
「せや!はよう支度して来いや!まだ夜明け前やし、ちょっと寒いから暖こうしてくるんやで?」
「えっ!?えーっ!?」

彼ときたら、満面の笑み。
彼の提案はちょっと強引すぎるけど…。
いたずらっこそのままの、あの笑顔を見せられたら、もう、嫌とはいえないよ…。

「わかった、急いで支度するから、ちょっと待ってて!」


・・・


「いやー、よう来たな!急だったんでな、断られるかと思ったで!」
グローブを外した大きな手で髪の毛をわしわしとやられながら、うつむく。
「… たら、強引なんだもの。」
「ハハ、かんにんな!けど、どうしても自分を早くオレのバイクに乗せたかってんもんv」
またその笑顔だ。…敵わないな、 には。

はポンとスペアのヘルメットを私の方へ放りながら言う。
「自分、バイク初めてやろ?ちょっと練習しよな!」
「う、うん。」

そういえば、後ろに乗るのにも練習がいると、聞いたことがあったっけ。

そうか、だから車の少ない夜明け前のこの時間を選んだのかな…?


・・・


「そしたら行くで!さ、腕をオレの腰へまわして……。」
「こ、こう?」

やったー!密着やv
これやこれ!これを待っててん!!!

感涙にむせび泣くオレの心を知ってか知らずか、 はいよいよ腕に力を込めてくる。
「ぐお!ロープ、ロープ!自分、オレを抱きつぶす気かいな!!」
「あっ!ごめん!!」
「ハハ、冗談やって! ええか?その調子でしっかり掴まっといてや!」
「うん!安全運転でお願いね?」
「おう!まかしとき!」

海に向かって走り出した時には、東の空がうっすらと明るくなってきていた。
良かった、この分やとなんとか日の出には間に合いそうやな!


薄紫色の車の少ない車道を走るのは気持ちがいい。

ずっとこのまま…。
ずっとこのまま自分と一緒に同じ時間を共有できていけたら…。

「なあ、 。ずっと一緒に……。」
「え?なぁに?聞こえないよ!」
「ハハ、ええねん。よっしゃ!飛ばすでぇ!!」
「きゃーーーっ!」

二人は今、一つの風になっていた……。




*………………………*

実はこのお話は、私自身の夢、ずーっと憧れていたシチュエーションなのですv
(実際は車で迎えに来て欲しいのですけど…)
残念ながら、リアルではとうとう実現しそうにないので、こうしてまどかちゃんと ちゃんに実現してもらいましたv

いかがでしたでしょうか?(照)